音楽の友社の標準音楽事典によりますと・・・

ファゴット:bassoon(英)Fagott(独)fagotto(伊)basson(仏)

 木管楽器の中で最低音域を受け持っているファゴットは、現在の管弦楽でも吹奏楽でも、また室内楽においても必要欠くべからざる楽器である。(中略)楽器の全長は2.95mの円錐管でこの円錐管は2つに折り曲げられた状態で約1.5mほどの長さになっている。(中略)音色については低音域は力強く充実して艶を持った響きがするがppはやや困難で大きな音に向いている。中音域は音量は落ちるが艶を失わない柔らかい音色でこの楽器の特色を出せる音域である。高音域は次第に艶と音量を失い、豊かさはまったくなくなる。(中略)全体的に静かな楽器であるが、この独特な音色はまったく貴重であり、よく他の楽器の音色に溶け込むことのできる長所を備えている。


 ・・でも人に説明するのが大変な楽器なんですよねぇ(^_^; まず「ファゴット」って言っても一回では通じないことが多いです。「バスーン」って言い直してもさらに混乱するし・・「オーケストラの真ん中で白い輪のついた煙突みたいな楽器があるでしょ・・」とか「ディズニーのファンタジアの中でミッキーが魔法使いの弟子をやっていて魔法で水汲みをさせる箒のテーマを吹いてるんだけど・・・」とか言ってもなかなか判ってもらえません。なにかいい説明があるでしょうか?
 一応私なりに解説しますとまず木管楽器です。材質は楓の木です。当HPの「楓の森」という名前はこれに由来したつもりです。楓という木はバイオリンの表板にも使われますので楽器の材としては響きが良い材なのだと思います。ちなみにクラリネットは黒檀です。また現在フランスだけに生き残っているバソンという楽器はクラリネットと同じ黒檀か紫檀で作られています。元々は同じ楽器だったようですがおそらくバロック時代以降にそれぞれ独自の発展をして現在の形になったようです。現在一般的に演奏されているファゴットはほとんどがドイツ式のキーシステムで作られています。(比較を「バソンのページ」でご覧下さい)

 リードは2枚舌です。奏者はそれに反して正直者が多いようです。工場での大量生産が不可能な形態なので自作するかプロが製作したリードを購入するしかありません。リード代が高いのも悩みの一つです。(リードに関しては「手作り工房えふわん」にて解説する予定。)

 楽器の名前ですが日本ではバスーンと呼ぶ人とファゴットと呼ぶ人がいます。前者は英語で後者はイタリア語とドイツ語の発音ですが演奏者はファゴットと呼ぶ傾向が多いように思います。ちなみにファゴットというのはイタリア語で「薪束」という意味だそうです。英語圏の人には「ファゴット」というのは男性同性愛者の隠語なので使わない方がよいという指摘もあります。


楽器は大きく4つの部分に分かれています。


●ベルジョイント:構えると一番上部に来る部分で先端に白い輪が付いています。現在はほとんどプラスチックですが当初は象牙だったと思います。金属製の輪が付いている楽器もあります。通常のベルジョイントよりカット部分を下げたロングベルの楽器もあります。第2次世界大戦のドイツ軍楽隊で収納するときのケースのコンパクト化を考えて作られたと聞いています。ロングベルタイプの楽器は別名ジェントルマンタイプとも呼ばれます。


●バスジョイント:ベルジョイントの下に接続される部分ですが左手親指の操作するキーが集中してます。ブーツジョイントに接続します。ロングベルタイプのバスジョイントは(それが目的ですので当然ながら)ノーマルより短くなっていてウィングジョイントとほぼ同じ長さです。ショートカットタイプなんていう言い方もするようです。


●ブーツジョイント:楽器の一番下の部分ですがファゴットの一番特徴的な部分です。中に穴が2本開いています。こんな構造の楽器は他にはありません。昔の人が一生懸命に管の長い木製の楽器の折り曲げに取り組んだアイデアの成果です。金属管ならこんな苦労はいりません。当然最下部にはU字型をした接続の管を必要とします。フレンチシステムのバソンは最近まではU字管でなくて単なる栓でこの2本を接続していました。

↓ブーツジョイントの表側(客席側)です。

↓ブーツジョイントの裏側(奏者側)です。

↓ブーツジョイントのU字管を外してみます。


●テナー(ウィング)ジョイント:ブーツジョイントにはめるもう1本の管です。バスジョイントを抱き込むような管の形態が羽のように見えるのでウィングジョイントとも呼ばれています。左手親指のキーが集中している部分の管体が他の木管楽器よりかなり厚いのが特徴です。トーンホールを斜めに穿つためにこのような構造になったようです。(指で押さえる場所と管内での開口部の位置がかなり差がある)これも昔の人が苦労した点だったはずです。

↓ウイングジョイントの表側(客席側)です。

↓ウイングジョイントの裏側(奏者側)です。


●ボーカル(クルーク):ウィングジョイントに金属の細い管を取り付けてさらにそこにリードを挿して演奏をします。この細い管がくせ者でボーカルを替えただけで楽器の響きや音程がガラッと変わることがあります。高いボーカルは平気で10万円以上します!安いフルートやクラリネットなら楽器が買えてしまいます!金属の材質も真鍮・銀・金などがありさらにそこへメッキもニッケル・銀・金・パラジウムなどがあり選択に困ります。楽器との相性もあるらしいです。複雑怪奇な世界です。


●ハンドレスト:ブーツジョイントの部分に右手の支えが付いています。最近の研究ではこの材質も音質に係わってくるようです。木製のハンドレストにすると響きが変わってくるようです。(手作り工房「えふわん」に製作記を掲載してありますのでご覧下さい。)

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